止めずに、 基幹を載せ替える。
創業から数十年、増改築を重ねてきた老舗製造業の基幹システム。仕様書は残っておらず、構築した担当者もすでにいない。「触れば壊れるから誰も触らない」という塩漬けの心臓部を、業務を一日も止めずに段階移行しました。周辺業務から参照系、そして基幹本体へ。順番こそが安全策だったプロジェクトの記録です。
- Client
- 老舗製造業(金属・機械部品)
- Period
- 約14ヶ月(調査〜全面移行)
- Scope
- 現状調査・移行設計・実装・運用移管
- Stack
- クラウド · IaC · コンテナ · 監視
00 / OVERVIEW
REF. 老朽化したオンプレ基盤を、可用性の高いクラウド環境へ段階移行
01 / THE CHALLENGE
触れば壊れる、
塩漬けの心臓部。
受発注・在庫・生産・出荷を一手に担う基幹システムが、誰も全体像を把握できないブラックボックスになっていました。止めることも、迂闊に手を入れることもできない——それが出発点でした。
- 構築当時の仕様書が現存せず、担当者も既に退職している
- サーバー老朽化で障害リスクが増大、保守部品も入手困難に
- 業務を止められず、まとめて作り直す「ビッグバン移行」は選べない
基幹システムは事務所の一角に置かれた古いサーバーで動き続けていました。長年の増改築で機能は複雑に絡み合い、どの処理がどこに影響するのか、全体を語れる人はもういません。OSもミドルウェアもサポートが切れ、ハードウェアが一台でも壊れれば業務が止まる——その危うさを、誰もが薄々分かっていました。
かといって、製造の現場は一日たりとも止められません。受注も出荷も毎日動いている。「全部作り直して、ある日いっせいに切り替える」やり方は、もし不具合が出れば事業そのものを止めかねない。安全に、しかし確実に。相反する条件をどう両立させるかが、最大の難所でした。
02 / OUR APPROACH
対話で解き、順番に載せ替える。
一度に動かさない。リスクの低い周辺から外側を固め、心臓部は最後に。順番そのものを安全装置にしました。
現行システムの棚卸しと対話
仕様書がない以上、まず現物を読み解くことから。実際の業務を担当者から丁寧に聞き取り、稼働中の処理やデータの流れを一つずつ図に起こして、失われていた全体像を再構築しました。
周辺業務から先にクラウドへ
いきなり基幹には触れません。帳票出力やファイル共有など、止まっても影響の小さい周辺業務を先行してクラウド化。移行の手順と勘所をチームで確かめ、安全な型を作りました。
参照系を並走させて検証
次に在庫照会や実績集計といった参照系を移行。旧基盤と新基盤を一定期間並走させ、同じ入力で同じ結果が出ることを毎日突き合わせて確認。安心して任せられる確証を積み上げました。
基幹本体を切り替え、運用を移管
最後に受発注・生産の基幹本体を移行。構成はコード化(IaC)し、誰が見ても再現できる形に。監視と自動復旧を備え、属人化していた運用そのものを引き継げる仕組みへ作り替えました。
03 / THE RESULTS
止めずに、身軽になった。
業務を一度も止めることなく移行を完了。コストも障害リスクも、目に見えて軽くなりました。
オンプレからクラウドへ載せ替えたことで、老朽サーバーの保守費や電気・空調といった見えにくいコストが消え、運用コストは約30%減りました。ハードウェア障害に怯える日々から解放され、構成はコード化されて「誰も触れない」状態も解消。これからの増改築にも耐える、身軽な基盤へと生まれ変わっています。
04 / CLIENT VOICE
「長年、いつ壊れるかと冷や冷やしながら使っていた基幹システムでした。作り直したいとは思っても、業務を止められないから踏み出せなかった。それを一度も止めずに、しかも順を追って少しずつ載せ替えてくれた。並走で結果を見比べながら進めてくれたので、不安なく任せられました。コストも下がって、今は安心して次の一手を考えられています。」
管理本部 部長/老舗製造業(北九州市内)


